京都地方裁判所 昭和56年(わ)1815号 判決
本籍
京都市上京区西堀川通今出川下る竪門前町三九八番地
住居
同市北区西賀茂坊ノ後町七〇番地
帯地製造業
田中啓博
昭和一〇年一一月二一日生
所得税法違反被告事件
検察官
小野哲 出席
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金五〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金八万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、京都市北区紫竹西野山町三番地の八において、田中工芸織物の名称で帯地製造業を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て
第一 昭和五三年分の総所得金額は一九三、四六九、八二四円で、これに対する所得税額は一二九、六五四、六〇〇円であったにもかかわらず、公表経理上架空の原材料費を計上するほかたな卸商品の一部を除外するなどし、これによって得た資金を架空名義の定期預金にするなどして所得を秘匿した上、同五四年三月一四日京都市上京区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地所在の所轄上京税務署において、同税務署長に対し、同五三年分の総所得金額は四七、九二五、三一五円で、これに対する所得税額は二二、九八六、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右年分の正規の所得税額一二九、六五四、六〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額一〇六、六六八、三〇〇円を免れ
第二 昭和五四年分の総所得金額は二〇七、七五三、〇六五円で、これに対する所得税額は一四〇、三七九、三〇〇円であったにもかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿した上、同五五年三月一四日前記上京税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の総所得金額は五六、九〇二、六一八円で、これに対する所得税額は二八、八一四、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右年分の正規の所得税額一四〇、三七九、三〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額一一一、五六四、五〇〇円を免れ
第三 昭和五五年分の総所得金額は一六三、七七九、四五五円で、これに対する所得税額は一〇七、二〇五、六〇〇円であったにもかかわらず、前同様の不正の方法により所得を秘匿した上、同五六年三月一三日前記上京税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の総所得金額は五〇、四九四、四四八円で、これに対する所得税額は二四、五三二、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一〇七、二〇五、六〇〇円と右申告にかかる所得税額との差額八二、六七三、一〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示各事実につき、被告人の当公判廷における供述のほか、公判調書中の証拠関係カード(検察官請求分)記載の左記番号の各証拠
全事実につき
一 番号11、19ないし109、112ないし132
第一事実につき
一 番号2、3、8、12
第二事実につき
一 番号4、5、9、13
第三事実につき
一 番号6、7、10、14
(法令の適用)
一 判示各事実につき 昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項、二項(右改正後の同法二三八条、刑法六条、一〇条)(懲役刑及び罰金刑を併科する)
一 併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条一項、二項
一 労役場留置 刑法一八条
一 懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項
(逋脱金額尨大、逋脱率高率にして責任は厳しく追及されなければならないが、逋脱の動機、査察後の反省協力、修正申告納税後の経済的苦境、労役場留置執行の可能性等を参酌考慮して主文のとおり量刑する。)
(裁判官 吉田治正)